
中医臨床 通巻147号(Vol.37 No.4)
商品コードc147
特集/老年症候群の中医治療
2016年12月20日発行
2016年12月20日発行
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中医学の智恵を高齢者の健康増進に活かす
【特集】老年症候群の中医治療
日本では2025年には75歳以上の後期高齢者が2千万人を超えるといわれている。2015年の日本人の平均寿命は83.7歳で世界首位を維持しているが,健康寿命は男性で約9年,女性で約13年平均寿命より短いとされており,この要介護状態でいる期間をいかに減らすかが喫急の課題であるとされる。
老年症候群(geriatric syndrome)とは,「高齢者に多くみられ,医療だけでなく介護,看護が必要な,症状や徴候の総称」と定義される。教科書では,少なくとも50以上の老年症候群があげられており,大きく①廃用症候群関連(ADLの低下・骨粗鬆症・椎体骨折など),②慢性疾患関連(認知症・脱水・麻痺など),③急性疾患関連(めまい・息切れ・腹部腫瘤など)の3つに分類される。
こうした疾患の背景は複雑かく多岐にわたるが,近年,日本老年医学会が従来の「虚弱」に代わって表すことを提唱しているフレイルの概念が重要である。フレイルとは,加齢に伴うさまざまな機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態とされている。中国の中医学では,臓腑・気血・陰陽の虚衰がフレイルの原因だとされているが,とりわけ先天の本である腎と,後天の本である脾の虧虚がポイントであると考えている。フレイルの弁証論治はいまだ定まっていないが,フレイルは「しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている」とされており,介入可能な病態であることから,中医学の智恵が高齢者の健康増進に役立つことが期待される。
本特集では,認知症のBPSDに対する抑肝散の有効性をみた研究で知られ,中医学の造詣が深く,高齢者に対する漢方治療経験が豊富な岩崎鋼先生に「高齢者医療における漢方・中医学の役割」をテーマにお話をうかがったインタビュー記事を冒頭に掲げ,さらに「中医学ではフレイルをどうみるか」について中国の雑誌文献を翻訳掲載した。また老年症候群の具体的な治療例として,慢性めまい症について入江祥史先生に,尿失禁と頻尿について田中耕一郎先生にそれぞれ寄稿していただいた。最後に中国の国医大師・張琪教授の認知症治療の経験について翻訳掲載した。
【特集】老年症候群の中医治療
日本では2025年には75歳以上の後期高齢者が2千万人を超えるといわれている。2015年の日本人の平均寿命は83.7歳で世界首位を維持しているが,健康寿命は男性で約9年,女性で約13年平均寿命より短いとされており,この要介護状態でいる期間をいかに減らすかが喫急の課題であるとされる。
老年症候群(geriatric syndrome)とは,「高齢者に多くみられ,医療だけでなく介護,看護が必要な,症状や徴候の総称」と定義される。教科書では,少なくとも50以上の老年症候群があげられており,大きく①廃用症候群関連(ADLの低下・骨粗鬆症・椎体骨折など),②慢性疾患関連(認知症・脱水・麻痺など),③急性疾患関連(めまい・息切れ・腹部腫瘤など)の3つに分類される。
こうした疾患の背景は複雑かく多岐にわたるが,近年,日本老年医学会が従来の「虚弱」に代わって表すことを提唱しているフレイルの概念が重要である。フレイルとは,加齢に伴うさまざまな機能変化や予備能力低下によって健康障害に対する脆弱性が増加した状態とされている。中国の中医学では,臓腑・気血・陰陽の虚衰がフレイルの原因だとされているが,とりわけ先天の本である腎と,後天の本である脾の虧虚がポイントであると考えている。フレイルの弁証論治はいまだ定まっていないが,フレイルは「しかるべき介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている」とされており,介入可能な病態であることから,中医学の智恵が高齢者の健康増進に役立つことが期待される。
本特集では,認知症のBPSDに対する抑肝散の有効性をみた研究で知られ,中医学の造詣が深く,高齢者に対する漢方治療経験が豊富な岩崎鋼先生に「高齢者医療における漢方・中医学の役割」をテーマにお話をうかがったインタビュー記事を冒頭に掲げ,さらに「中医学ではフレイルをどうみるか」について中国の雑誌文献を翻訳掲載した。また老年症候群の具体的な治療例として,慢性めまい症について入江祥史先生に,尿失禁と頻尿について田中耕一郎先生にそれぞれ寄稿していただいた。最後に中国の国医大師・張琪教授の認知症治療の経験について翻訳掲載した。
◆本号の主な内容
【特集/老年症候群の中医治療】
■[安徽取材]新安名医の臨床に迫る(胡国俊・木田正博)
■[医療用漢方エキス剤の中医学的理解とその運用]瀉下法(渡邊善一郎)
■[漢方薬と鍼灸治療のコラボ]腎虚に対するコラボレーション(関口善太)
■[安徽取材]「通督調神」の鍼灸療法で難病・慢性病を治療する安徽名医(張道宗)
■[座談会]「穴性論」を振り返って(金子朝彦ほか)